「屋根を軽くすると地震対策になる」「重い屋根から金属屋根へ替えたほうがよい」と聞いたことがある方もいるでしょう。屋根の軽量化は実際に耐震性を考えるうえで関係する要素ですが、屋根材1㎡あたりの重さだけを比較すればよいわけではありません。既存屋根を撤去するのか残すのか、下地をどう直すのかまで含め、リフォーム後の屋根全体がどう構成されるかを見る必要があります。
屋根を軽くするリフォームとは?
屋根を軽くするリフォームとは、簡単にいえば、既存の屋根よりもリフォーム後の屋根全体の重量を軽くする工事です。
代表的なのは、比較的重量のある屋根材を撤去し、軽量な金属屋根などへ葺き替える方法です。
たとえば金属屋根には、ガルバリウム鋼板や改良されためっき鋼板を使用した製品があります。製品によって重量は異なりますが、一般に金属屋根は軽量な屋根材として扱われています。
国土交通省の長期優良住宅化リフォーム推進事業でも、「屋根の軽量化」は耐震性に関する性能向上工事の例として挙げられています。
【国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業 住宅の性能向上工事」】
https://r06.choki-reform.mlit.go.jp/requirement/improvement.html
ただし、ここで注意したいのが、
「軽い屋根材を使う=必ず屋根全体がその重量になる」
わけではないことです。
既存屋根を撤去して軽い屋根へ交換する「葺き替え」と、既存屋根を残してその上へ新しい屋根を施工する「カバー工法」では、完成後に建物へ載っているものが違います。
したがって屋根の軽量化を目的とするなら、屋根材の商品重量だけではなく、施工前と施工後の屋根構成そのものを比較する必要があります。
なぜ屋根の軽量化が耐震性と関係するのか
地震が発生すると、建物には横方向の力が加わります。
そのとき建物上部にある屋根が重ければ、その重量も建物に作用する地震力を考える要素になります。
そのため木造住宅の耐震改修では、屋根を軽くすることが耐震性を改善する方法の一つとして扱われることがあります。
ただし、
「屋根を軽くすれば、その家の耐震性は問題ない」
という意味ではありません。
住宅の耐震性には、屋根だけでなく、壁の配置や耐力、柱・梁、接合部、基礎、建物形状、劣化状態などさまざまな要素が関係します。
屋根工事でできるのは、その中の「屋根重量」という要素を変えることです。
そのため耐震性能そのものを評価したい場合には、屋根業者による屋根診断だけではなく、必要に応じて建築士などによる耐震診断・構造上の検討が必要になります。
屋根の軽量化は耐震対策の一つになり得ますが、住宅全体の耐震性と屋根材の軽さを同じ意味として扱わないことが大切です。
金属屋根はどのくらい軽いのか
金属屋根といっても製品によって構造・厚さ・重量は異なるため、「金属屋根はすべて○kg」と一括りにはできません。
具体例として、アイジー工業の金属屋根材「スーパーガルテクト」はメーカー公表値で1㎡あたり5.0kgです。メーカーは同製品について、スレート屋根の約1/4、和瓦屋根の約1/10の重量と案内しています。
【アイジー工業「スーパーガルテクト」】
https://www.igkogyo.co.jp/syohin/detail/gt5.html
S・B・Gの実際の検索表示クエリにも「屋根 ガルバリウム鋼板」「ガルバリウム鋼板 屋根」「金属屋根」「屋根材 金属」などがあり、金属製の屋根材そのものを調べている検索需要が確認できます。
しかし、ここからが屋根リフォームでは重要です。
仮に新しく使用する金属屋根材が5kg/㎡だったとしても、リフォーム後の屋根全体が単純に5kg/㎡になるわけではありません。
屋根には屋根材以外にも、
- ルーフィング
- 野地板
- 棟やケラバ、軒先などの板金役物
- 下地材
- 既存屋根材
などがあります。
特にカバー工法では、既存屋根材がそのまま残ります。
つまり、新しく載せる屋根材の重量と、リフォーム後に建物へ載っている屋根全体の重量は別の話なのです。
金属屋根自体の種類や特徴について知りたい場合は、屋根材としての説明と、リフォーム工法としての説明を分けて考えると理解しやすくなります。
「葺き替え」と「カバー工法」では軽量化の意味が違う
屋根を軽くすることを目的にリフォームする場合、特に理解しておきたいのが葺き替えとカバー工法の違いです。
葺き替えは既存屋根を撤去して重量を入れ替える
葺き替えでは、既存の屋根材を撤去してから新しい屋根を施工します。
たとえば重量のある既存屋根材を撤去し、それより軽い金属屋根へ変更すれば、屋根部分の軽量化につながります。
さらに既存屋根を撤去するため、その下にあるルーフィングや野地板の状態を確認しやすいことも特徴です。
下地が傷んでいれば、必要な補修を行ってから新しい防水層と屋根をつくることができます。
実際の検索クエリにも「屋根 葺き替え 下地」「屋根下地 ルーフィング」「屋根下地 防水シート」があり、屋根材だけでなく下地まで含めたリフォームへの検索需要が確認できます。
屋根材・ルーフィング・野地板の役割とは?屋根の防水構造を分かりやすく解説
カバー工法は既存屋根を残したまま新しい屋根を追加する
一方、カバー工法は既存屋根を基本的に撤去せず、その上から新しいルーフィングと金属屋根を施工します。
S・B・Gの検索表示クエリにも「屋根に屋根を重ねる」「屋根の上に屋根」があり、この工法そのものを調べている検索者がいることが分かります。
カバー工法で使用する金属屋根が軽量であっても、
既存屋根
+新しいルーフィング
+新しい金属屋根
+必要な役物・下地
という構成になります。
つまりカバー工法は「軽い屋根材を使用する工事」ではあっても、既存屋根を撤去して建物上部の重量を減らす工事とは意味が異なります。
この違いは非常に重要です。
既存スレート屋根から金属屋根へ変更する場合については、葺き替えとカバー工法の違いを別の記事で詳しく解説しています。
スレート屋根から金属屋根へ葺き替える場合とカバーする場合の違い
屋根材の重量だけではなく「施工後に何が残るか」を見る
屋根の軽量化を検討するときは、カタログに記載された「○kg/㎡」だけを比較するのではなく、施工後の屋根構成を確認します。
たとえば、次の2つは同じ金属屋根を使っていても意味が違います。
既存屋根を撤去する場合
新しい金属屋根
↓
新しいルーフィング
↓
必要に応じて補修した野地板
↓
屋根構造
既存屋根をカバーする場合
新しい金属屋根
↓
新しいルーフィング
↓
既存屋根材
↓
既存ルーフィング
↓
野地板
↓
屋根構造
完成後に外から見えるのは、どちらも同じ金属屋根かもしれません。
しかし内部構成は異なります。
そのため「この金属屋根は軽いから大丈夫」という説明だけでは、屋根リフォームとして十分とはいえません。
確認したいのは、
何を撤去するのか。
何を残すのか。
何を新しく載せるのか。
下地はどのような状態なのか。
という点です。
屋根材の商品性能と、住宅に施工したあとの屋根全体の状態を分けて考えることが、工法選びでは欠かせません。
軽量化だけでなく下地と防水構造も確認する
屋根を軽くすることに意識が向きすぎると、屋根本来の役割である雨仕舞や防水構造がおろそかになりかねません。
住宅の屋根は、屋根材だけで雨漏りを防いでいるわけではありません。
金属屋根の下にはルーフィングがあり、その下には野地板があります。
屋根材は主に雨を受けて下へ流し、ルーフィングは屋根材の内側へ入った雨水を建物内部へ到達させない二次防水として機能します。
野地板は、それらを支える下地です。
つまり屋根リフォームでは、
軽い屋根材を選ぶこと
+
適切な下地へ固定すること
+
防水層を適切につくること
+
雨水を排出できる納まりをつくること
までが一つの工事です。
棟、軒先、ケラバ、谷、壁際などでは、それぞれ水の流れを考えた板金加工・納まりも必要になります。
国土交通省の公共建築工事標準仕様書でも、屋根について取合い部を含めて漏水がなく、所定の耐風圧性を有することが基本要求品質として示されています。
したがって、重量が軽いという一点だけで屋根材や施工方法を選ぶべきではありません。
「耐震のために屋根を軽くしたい」ときに確認すること
耐震性を意識して屋根リフォームを検討している場合、業者には単に「軽い屋根にしてください」と伝えるだけではなく、工事前後で何が変わるのかを確認するとよいでしょう。
特に確認したいのは次の点です。
1.現在の屋根材は何か
瓦、スレート、金属屋根など、既存屋根によって現在の重量やリフォーム方法が変わります。
2.既存屋根を撤去するのか
軽量化そのものを目的とする場合、既存屋根を残すか撤去するかは大きな違いです。
3.新しい屋根材の重量はどの程度か
「金属だから軽い」という説明だけではなく、使用予定製品のメーカー資料から実際の重量を確認できます。
4.下地工事は必要か
既存野地板の状態によっては補修や増し張りなどが必要になることがあります。屋根材だけの重量比較では、この部分が抜け落ちます。
5.耐震性についてどこまで判断しているのか
屋根施工会社が判断できるのは、主として屋根材・屋根構成・下地など屋根工事に関する部分です。住宅全体の耐震性能まで評価する場合は、耐震診断など別の検討が必要です。
この線引きを明確に説明してくれるかどうかも、業者へ相談するときの確認ポイントになります。
屋根の軽量化が目的でも工法を先に決めない
「耐震性が気になるから金属屋根へ葺き替える」
という考え方自体は間違いではありません。
ただし、実際の住宅では屋根の状態によって必要な工事が変わります。
既存屋根材は何か。
下地は健全か。
雨漏りしていないか。
ルーフィングはどうなっているか。
屋根を軽くすること自体が今回のリフォームの主目的なのか。
これらを確認したうえで工法を決めます。
たとえば既存スレート屋根で下地が健全であり、目的が屋根の更新であればカバー工法が選択肢になることがあります。
一方、既存屋根を撤去して屋根全体の重量を減らすことを重視するのであれば、同じ金属屋根を使うとしても葺き替えとカバー工法では意味が違います。
また、下地に大きな傷みがある場合には、重量以前にその補修を考えなければなりません。
「軽い材料だからこの工法」ではなく、現在の屋根を確認した結果として材料と工法を決める。
これが屋根リフォームを考える基本です。
よくある質問
屋根を軽くすると地震に強くなりますか?
屋根の軽量化は耐震性を考えるうえで有効な要素の一つです。国土交通省のリフォーム関連制度でも、屋根の軽量化は耐震性の性能向上工事として扱われています。ただし住宅全体の耐震性は、耐力壁、柱・梁、接合部、基礎など複数の要素によって決まるため、屋根を軽くするだけで住宅全体の耐震性能を断定することはできません。
ガルバリウム鋼板の屋根なら軽いですか?
ガルバリウム鋼板などを使用した金属屋根は、一般的に軽量な屋根材です。ただし製品によって重量は異なります。使用する商品のメーカー公表値を確認し、さらに既存屋根を撤去するのか残すのかまで含めて考える必要があります。
カバー工法でも屋根を軽くできますか?
カバー工法では既存屋根を残したまま新しい屋根を追加するため、基本的には「既存屋根を撤去して屋根全体を軽くする工事」とは考え方が異なります。軽量な金属屋根を追加することで増加する重量を抑えやすい工法ではありますが、純粋な軽量化を目的とする場合は葺き替えとの違いを確認する必要があります。
重い瓦屋根は必ず金属屋根へ葺き替えたほうがよいですか?
屋根材の重量だけで「必ず葺き替えるべき」とは判断できません。既存屋根の状態、建物の構造、耐震性能、リフォームの目的などによって判断は変わります。耐震性に不安がある場合は、屋根工事だけでなく住宅全体の耐震診断を検討することも必要です。
金属屋根にすれば下地の状態は関係ありませんか?
関係します。金属屋根が軽くても、それを固定する野地板などの下地が傷んでいれば適切な施工はできません。屋根材の重量とは別に、下地、防水層、固定方法、役物板金の納まりを確認する必要があります。
まとめ
屋根を軽くするリフォームを考えるとき、最初に確認したいのは「一番軽い屋根材は何か」だけではありません。
見るべきなのは、工事前と工事後で屋根全体がどう変わるのかです。
既存屋根を撤去するのか。
残したままカバーするのか。
新しい屋根材はどの程度の重量なのか。
野地板などの下地は健全なのか。
新しいルーフィングをどう施工するのか。
そもそも屋根の軽量化を何のために行うのか。
特に耐震性を目的としている場合、軽量な金属屋根を選ぶことと、住宅全体の耐震性能を評価することは分けて考える必要があります。
焼津市・藤枝市・静岡市など静岡県中部で屋根リフォームを検討する場合も、「軽い屋根材にしてください」だけで工法を決めるのではなく、現在の屋根構成と下地を確認し、葺き替え・カバー工法などを比較することが大切です。
株式会社S・B・Gでは建築板金・金属屋根・屋根リフォームを扱う施工会社として、表面に施工する屋根材だけではなく、その下のルーフィングや野地板、既存屋根との関係まで含めて工事内容を考えます。
屋根材の重量は重要な判断材料です。しかし、「何kgの屋根材を使うか」だけではなく、「工事後、家の上に何がどのような状態で残るのか」まで確認することが、屋根を軽くするリフォームを正しく考えるための基礎になります。
